No.3934 大山(大屏風岩・宝珠尾根)


神庭

月 日:平成22年2月20日夜~21日
参加者:名越、福永、元広

<行動記録>
登攀の名越さんと、登攀装備のない福永・元広両名からの参加表明があり、名越さんが単独ルート整備に、残る3人は簡単な尾根ルートにというような計画を立てていた。しかし出発直前に、「リーダーはガイドではない!」という名越さんの意見により、多少不安ではあるが名越・神庭、そして福永・元広という2パーティ編成に計画書を書き換えての出発となった。係としては、かなり不安があったのだが...。そして結論から言うと、この計画変更が功を奏し、参加者全員が精一杯の力を出し切って山行を終えることができた。自分の力で行ったから、成果が自分の物になったのでしょう。係だけは連れて行ってもらった方なので、まだまだ自分の物になってませんが。
広島組は12時30分大町駅出発、夕方から元谷小屋へ向かうが、小屋は満員で外はテント村になっている。吉岡さん寄贈のゴア4テンを張り、21時前に係が合流する。テント内では福永さんの鍋を囲んで小宴をしていたのだが、「じゃー明日は福永さんと元広さん、二人で宝珠尾根に行ってくださいね。」と言うと、二人とも宴どころではなくなって、慌てて地形図やら概念図やらを引っ張り出して、「ルートはこれでいいの」とか、「ここの地形はどうなっているの」など、まるで合宿前の事前準備のような雰囲気になってきた。「どこに連れて行ってもらえるんだろう?」という楽しみ100%から、一気に不安100%へと急転したようだった。なるほど、名越さんの言いたかったことがこれだ。無線とツェルトを渡して、それでは明日がんばってくださいねと言って就寝した。風のない、穏やかな夜だった。翌朝5時半頃に出発。中宝珠越への谷の入口まで案内して宝珠尾根隊の福永・元広両名と別れ、登攀隊は大屏風へ向かう。

【登攀隊の記録】
今日は最高のコンディションなので、名越さんが港ルートを「案内」してくださるという。さっそく1ピッチ目の凹角はランナウトから始まり、リングボルトにピッケルやアイゼンを引っ掛けての人工となった。ビレイ点に着くと「シビれるじゃろ?こっから難しくなるで。」と名越さん。いやもう充分難しかったですけど。
2ピッチ目の溝状(写真)をどうにか這い上がり、3ピッチ目の少し傾斜が落ちたところを名越さんは思いっきりランナウトして登り、きわどい垂直の壁をアクロバティックにトラバースして左上する。登攀技術もそうだが、このあたりのルートファインディングがさすがだと感心する。4ピッチ目もさらに左上して核心部を終了した。16時である。無線連絡すると宝珠尾根隊から返信があった。もうすぐ元谷小屋へ着くとのこと。今回は屏風岩から宝珠尾根隊の後半の行動がよく見えて、なかなかおもしろい例会になった。我々はブッシュを使って天狗沢側へ懸垂する。途中のビレイ点は崩落していて、ハーケンを打ってもう1ピッチ下降すると天狗沢に下りた。振り向けば見事な青氷である。今回は登攀と下降中、二度ほどコールが聞こえず無駄に数十分を失ったのが、初歩的な失敗であった。
それにしても、決して容易ではないルートをわずかな中間支点で登りきる名越さんを見ていると、ピッケル・アイゼンワークへの絶対の信頼と、ルートを観察する眼力を感じる。これが冬の登攀、これがクライマーというものか。何だかイケナイ世界を垣間見てしまったようだ。果たして自分でリードできるようになるだろうか。登った後は壁が小さく見えるというが、まだ自分がリードしていない分、逆に帰る時には壁がとても大きく見えていた。ありがとうございました、名越さん。

<コースタイム>
4:00起床5:20出発→6:00中宝珠分岐→7:30大屏風岩(港ルート取付)8:00→16:00 4ピッチ目終了→17:00取付→18:00元谷小屋→19:30仁王茶屋